PULL+PUSH PRODUCTS. 佐藤延弘さんのアイディアの源泉は、”素材”そのものの興味とこだわりです。
最近生み出された、ジアゾ(diazo)、これは建築図面などの複写に用いられる青焼き印刷(ジアゾコピー)紙を使っています。この青焼きの紙は時間の経過とともに、劣化して色あせていきます。CADが発達し、デジタルコピーが可能になり、廃液の環境問題など、いくつもの要因で、もう青焼きという技術はなくなろうとしています。そんな逆境の中、あえてこの青焼きの色あせていく様子に着目したのが、diazoシリーズです。
青焼き印刷の紙が内外全体に貼られた箱。陽を浴びると鮮やかな青色は、時間とともにゆっくりと色が変化していく箱です。
”淡い水色の部分はクリーム色へ、濃い青色は赤紫色へと変わっていきます。
黒いパッケージは、陽を遮り時間を止めるための袋です。
袋から出したときから、箱は時を刻みます。
箱に閉じ込められた写真や手紙、開ける時はどれだけの年月を経ていますか。”
また、時を経て箱を開けるとき、箱の外側は陽の光を浴びて色が変化していきますが、箱の中はまだ元の青い色が当時のままに残されています。箱の中に記憶がしまわれていたのが思い起こされるように、開けた時にタイムスリップするかのように、新鮮な青色が目に飛び込んできます。
時間とストーリーが詰まった箱が diazo シリーズの箱です。
diazoシリーズには、ノートブックと鉛筆があります。色の変化を楽しむノート。自分が、そのノートをどれだけ使っていたかが、その色具合から知ることができます。色褪せて中身のいっぱい詰まったノート、色褪せているけど中は真っ白なノート。鉛筆も同様に、使っていくうちに色が変化していきます。汚れやシミも楽しめます。何も書かなくてもストーリーが生まれるノートと鉛筆。とても不思議な感じがします。
まだ、試作途中ということもあるのですが、diazo の鉛筆は、佐藤さんが手で市販の鉛筆に巻いています。そして、diazo のノートも佐藤さん自身が製本をされています。なんと、ノートの綴じは家庭用ミシンで縫い付けているそうです。異常に目が細かくて、びっくりしますが、この手作り感が PULL+PUSH PRODUCTS. の魅力です。