はしもとみお展 いよいよ始まりました。この日を迎えることができたことは、本当に感慨深い想いです。美術の世界について何もしらないまま、今からちょうど2年前のギャラリーを始めました。はしもとみおさんの作品に代官山での展示でその年の12月に出会い 、恐れ多くもすぐに企画展示の申し入れをし、階段4階という、彫刻の展示会にはあまりにも不便な場所にも関わらず、作品を作りためる期間も含めて1年後であればということで承諾いただき、実現しました。
今回展示している、大小様々の彫刻たち、その数にも驚くのですが、なんといっても、それぞれのいぬねこ達の表情がなんとも言えず素敵です。
等身大のいぬねこに圧倒され、手のひらサイズのいぬねこに癒され、さらに小さな親指サイズミニミニ彫刻まで。そのすべてのスケールが、そのスケール感を崩さず、もとになった、生きている、またはかつて生きていた、いぬとねこがリアルに彫刻となって新たな命が生まれています。
はしもとみおさんが作る彫刻は全てモデルとなる生きている・生きていたリアルな動物達が存在します。私もそうですが彫刻を見る時、ついその形だけに囚われてしまいがちです。でも、対人での付き合いは相手の様相だけでなく、内面を見ることが大事だというのは誰もが経験した事だと思います。はしもとみおさんの彫刻がリアルだと感じるのは、まさに彫刻に心まで彫り込んでいるからだと思います。はしもとみおさんの彫刻をやさしくなでてあげると、応えて笑いかえしてくれる。そんな経験をします。
会期中の彫刻達は はしもとみおさんの意向で、写真撮影も触れることも出来ます。ぜひ、いぬねこ島にいらした際は、彫刻に触れてやさしく話しかけて見てください。きっと不思議な体験が出来ると思います。
今週の5月23日(金)、24日(土)、25日(日)はモノマチという、台東区の南地域、御徒町・蔵前・鳥越・寿・台東・浅草橋・柳橋周辺のモノづくりに関わるアトリエや店舗、問屋、工房、職人がそれぞれの拠点場所でモノづくりの楽しさを伝えよう、というイベントがあります。今回が第五回目で、ギャラリーもオープン後、二回目の参加をします。
モノマチ期間でしか味わえない催しや、モノマチ期間限定で開放する問屋やお店が沢山あります。ぜひ、このモノマチを楽しみにもいらしてください。
オープニングの初日5月17日の18:00からは、はしもとみおさんのギャラリートークがありました。
みおさんは一人人前で話すのは苦手ということで、質問コーナーを沢山とりました。いくつか紹介します。(文書化は記憶からのみで、うろ覚えの部分もあります。言葉の言い回しはみおさん自身の言葉とも違います)
Q) 沢山の彫刻が並んでいるがどのくらいのスピードで出来るのか?
A) 展示している、手のひらサイズのいぬねこ彫刻たちのほとんどが、この一年間で制作されたものです。彫刻には終わりがないので、一つにいくらでも手を加えようと思うと、時間が必要になる。終わりを決めないといつまでも終わらないので、小さな彫刻は数日で完成させるようにしている。等身大の彫刻となると、数か月、またはそれ以上かかるので、1年に10体くらいしか等身大の彫刻を作ることができない。特に、等身大の彫刻の場合は、木を選ぶ所から始めるので、木との出会いから始めなければいけないので、木に出会うまでに何か月、または1年以上かかることがあるので、彫刻の依頼を受けても、すぐに制作に取り掛かることはできない。また、自分が作る彫刻にはいつまでも時間をかけて完成させずに時間が経つことがあるけど、依頼された彫刻については、完成させないわけにはいかない。オーダーの彫刻については、依頼者に納得していただいた時点で終わりにする。制作中は何度も依頼者とコンタクトを取り、表情の確認や、満足いただけているか確認する作業が欠かせない。依頼者が納得していない時点で完成したといって納品することは考えられないので、すごく難しい。いつも等身大の彫刻が死ぬまでにあと、何体彫ることができるのか、常に考えつつ彫刻の仕事をしている。
Q) 彫刻は、何の木を使っているのか?
A) 彫刻は全てクスノキの木でできている。クスノキは日本古来の木で、特に四国や九州に沢山生えていて、入手しやすく、価格もそれほど高くなく、彫刻もしやすので使っている。神社などでよくご神木として使われている木で、日本人になじみのある木でとても好き。クスノキは巨木も入手できるので、大きな彫刻を作るのには欠かせない木。宮大工棟の故・西岡棟梁がおっしゃられてた話で、1000年の木は、切られたあと1000年以上耐えられる構造材として使うことができるといわれている。大型犬の等身大彫刻は樹齢100年以上のクスノキが必要になるが、その木で自分が彫った彫刻は100年以上彫刻として生きることができるという想いで彫っている。 それ以外にも、クスノキには自分にとって沢山の物語がある。阪神淡路大震災を自ら経験し、多くの人々が亡くなり、沢山の建物や家が崩壊したのをみてきたが、その時、目に留まったのが自宅の庭先に、生えていたとても細いクスノキの木でした。その細いクスノキは、あの大地震にも関わらず、まるで何事もなかったかのように、大地震でゆらゆらと揺れることでそこに立ち続けていた。自然の脅威と、同時に生きるものの強かなしなやかさを感じた。そういった物語がクスノキにはある。
Q) 先ほど、彫刻は木の選びから始めるという話があったが、それはなぜか?彫刻の木はどういう基準で選ぶのか?
A) 人や動物にそれぞれの性格があるように、木にもそれぞれの特徴と性格があります。彫刻の依頼を受けた時、その子たちの物語や性格から木を選ぶので、事前に用意された木から彫ることは出来ない。たとえば、具体例でいうと、4体のねこの彫刻を彫る依頼があり、それは、親と子供、兄弟と、すべて血のつながった家族の彫刻の依頼でした。血がつながっているので、木を選ぶときも、1本の大きな木から、その4体すべての木を取り出せるようにした、大木を四分割して、それそれの子を彫ります。そのほか、なかなか人に媚びない気難しい犬だったりした場合、木目が曲がりくねった、非常に彫りにくい木を選びます。性格がまっすぐで、何でも言うことを聞く犬だったりした場合は、やはり選ぶ木も木目がまっすぐで、彫りやすい木を選びます。そのように、モデルの性格と木の性格が合うようにしないと、本当の意味でリアルなものが造れないので、依頼を受けたあと、木を選びます。そのために、彫刻を始めるには、木との出会いから始めなければいけません。
Q) 彫刻にはごつごつしたノミの彫り後が残っているがなにか理由があるのか? 着色に使っている素材はなにか? 木彫りは着色しない木彫も多いとは思うが、なぜ着色しているのか?
A) なぜ、こういう彫り方なのか、という質問は同じ大学の同僚でもあった、ここにいる彫刻家の本多絵美子ちゃんからも聞かれたことがあるが、自分ではわからない。ただ確実にいえることは、自分には、そのように見えるということ。逆に、ここにいるカメの彫刻などを見ると、甲羅の表面は滑らかになっています。彫刻を触った感触と実物のカメを触った感触が同じになるようにしています。カメの場合は滑らかだったので、彫刻も滑らかになった。いぬやねこの場合、毛並や柔らかさをリアルに再現することに徹した結果、今のような彫刻が出来上がっている。スタイルを決めて彫刻を彫っているのではなく、生きている動物を彫刻を残すために彫刻をしている。 動物の目の色は漆を使っています。目が光って見えるのは漆の光です。その他の色はオイル系の塗料などです。 色塗りに関しても、同じで、彫刻の中にはほとんど、着色をしていない彫刻もあります。でも、それは、実物のモデルが木の肌と同じような色をしていたので、着色をしていません。逆に、モデルが黒に近かったりした場合、クスノキは黒ではないので、着色をする必要が出てきます。少し繰り返しになりますが、私が残したいのは、彫刻ではありません、生きている動物、個としていぬやねこそのままを、今、残したいと思っています。その結果、彫刻にたどり着きました。着色しているのも、着色しないと違うものに私には見えるので、着色をしています。
今回の展示に合わせて、我が家で飼っているねこ3匹、タラちゃん、ニコちゃん、イクラちゃんをはしもとみおさんに半年ほど前にオーダーして、作っていただきました。今年て15歳くらいになる、アメリカから連れて帰ってきたタラちゃんは8割くらいのサイズで作っていただいていて、日本に帰国後飼い始めた姉妹のニコちゃん、イクラちゃんは、手のひらサイズです。 はしもとみおさんが、彫刻たちに触れている姿は、まさに生きた動物に触れる姿そのものです。手のひらサイズの彫刻を手に持っているときも、まるで、小さな小さな動物が本当に存在するような錯覚に陥ります。
ギャラリートーク終了後、少し準備の休憩をとり、オープニングライブでした。
ドラムは、はしもとみおさんのお兄さんの 橋本学さん、そして、カリンバSageさんのお二人によるライブです。お兄さんの橋本学さんは、はしもとみおさんの作家活動に多大な影響を与えている方ということで、今回とても企画をしたかったライブです。
カリンバSageさんは、友達のカリンバ奏者で現在 岡山に在住のコイケ龍一の演奏仲間で、以前、コイケ龍一君とカリンバSageさん、お二人によるライブをさせていただいたことがきっかけで知り、今回のデュオ企画が決まりました。
橋本学さんと、カリンバSageさんは、この日初めての出会いです。初対面とは思えない、素晴らしいライブでした。
カリンバSageさん、演奏で使っているカリンバの多くは、ご自身の手作りです。カリンバの販売もされています。
橋本学さんの、動物プロファイリングなど面白話が飛び交う楽しく、素敵なライブでした。
実は、忙しすぎて、ライブ前半の録画がまともに撮れていなかったので、後半のみライブ映像をYouTubeにアップしました。オープニングライブは、遠方からお越しいただいた方も多く、前半のライブに参加された多くの方でも、後半は聴いていない方も多いと思います。映像なので、ライブと感覚が少し違ってしまいますが、ぜひお楽しみください。
また、いぬねこ島へようこそ! 展示期間中、演奏者の橋本学さんと、カリンバ Sageさんの承諾を得まして、オープニングライブの録音音源を流す予定です。彫刻とともに、音楽もお楽しみください。
いぬねこ島へようこそ! 橋本学 x カリンバ Sage / 彫刻家はしもとみお展 オープニングライブ 第2部
ライブ締めの曲 「いぬねこ島へようこそ! にんげんもようこそ!」
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ライブ終了後のフリートーク 橋本学 x はしもとみお
お蔵入りされた、パパの絵をみたい方、ぜひお声をかけてください。
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橋本学さん、カリンバSageさん、素敵なライブをありがとうございました。
6月25日(金)は、再度、橋本学さんに出演いただき、 いぬねこ島へようこそ! 企画ライブ 橋本学 × タカスギケイ をやります。こちらも、ぜひお越しください!
いぬねこ島へようこそ! 彫刻家はしもとみお展、まだ始まったばかりです。まだ一か月続きますので、ぜひ、足をお運びください。
期間中の 彫刻家はしもとみお 在廊予定日: 5月17日、5月18日、5月24日、5月25日、6月21日